地域資源を活用 萬来鍋を世界に


地域資源を活かした萬来鍋を世界に

独創性をいかしてオンリーワンの技術でニッチトップを狙う」基本戦略が固まり、自社の強みをいかせるビジネス展開として、業界が大きな機械に目を向けているからこそ小さな機械で活路を見出そうと考えた。豆腐は出来たてが実においしい。知人などと構想を練り、卓上サイズの業務用豆腐製造装置を開発したことでホテルや旅館、飲食店など新しい販路ができた。これが「お客さんの目の前で豆腐ができたらもっと楽しい」という発想につながり豆腐ができる鍋の開発を進めた。

ステンレスの鍋よりも温かみがある地域資源「万古焼」

通常の鍋では「ス」だらけになってしまい豆腐がうまくできない。湯煎など試行錯誤してたどり着いたのが蒸気を発生させ循環させる蒸気二重鍋方式。上下から均一に加熱され短時間でムラなく豆腐を作る方法を考えた。当初は機械屋ということもありステンレスで試作した。しかしながら食は見た目も重要。ステンレスでは温かみがなくおいしそうではなかった。そこで思いついたのが幼い頃から身近にあった万古焼。万古祭など地元の行事で親しみのある地場産業ではあるが、安価な中国製に押され気味と聞く。

心強いパートナーとの出会いから生まれたオリジナル「萬来鍋」

すぐに話に乗ってくれると思い、幼馴染の友人のつてで窯元に飛び込み説明したが、なかなか進まなかった。プロの窯元や問屋さんが新商品を開発しても売れない時代。素人が開発を持ち込んでも説得力に欠けていた。
そこで若手の経営者を探し四日市の窯元、クリエイト寿づかの石崎靖典氏と巡り合った。

こうして開発した試作を飲食店やホテルに持ち込むと大好評。陶器で作った方がステレスより遠赤外線効果などもあり、キメ細かい上質な豆腐ができた。当初出来上がり時間は20分かかったが10分でできるように厚さや微妙な幅、角度など工夫し2003年に販売開始した。万古焼と千客万来の願いをこめて「萬来鍋」と名づけた。

ニューヨーク視察で「萬来鍋」と出会った時の感動を胸に

豆腐ができる目新しさと地場産業とコラボレーションしたこともあり、メディアが続々と取り上げてくれて話題になった。海外から会社に顧客がわざわざ来てくれるようになった。日本食の関心度の高さを直感し、米国を視察した。

ニューヨークで話題の日本食レストランに行くと「出来立て豆腐」がメニューにすでにあった。「やられた」とがっかりしながら注文すると、萬来鍋の豆腐がでてきた。実は経営者が評判を聞いてくれて独自に持ち込んでくれていた。思わず涙がこみ上げた。

本格的に海外展開をするにはいつくか問題があった。資金の問題もあったが原料の豆乳の輸送手段がなかった。改良を重ね日持ちする無菌の専用豆乳を開発した。展示会に出展し試食を出すと一部の人には受けるが、「出来たて」に対する関心はうすい。そこでPR方法も工夫した。ヒントはカリフルニアロールであった。黒い色の海苔に米国人は苦手なため、海苔を内側に巻き鮮やかな色のついたロールがすしブームの火付けになっていることを知った。

世界22カ国で受け入れられた実績の先にあるもの

いろいろな変わり豆腐を試食でだした。特にうけたのが砂糖を入れて甘くしてシロップをかけた豆腐。固定概念にとらわれずマーケットインの発想が必要なことがわかった。

萬来鍋や豆乳そして抹茶、柚子やわさびを使った香味塩等「BANRAIブランド」商品の開発を進め現在では22カ国に出荷実績ができた。

有名な日本食レストランやフレンチの三ツ星レストランでも使ってもらっている。いろいろな地域の食材、木工品や陶磁器を組み合わせた提案を行い輸出している。

最近は中小企業の国際化サポートを依頼されることも多い。中小企業の国際化の難しさは自分が体験してきただけによく知っている。日本の優れた地域資源を世界に発信し少しでも地域経済の発展に貢献できればと考えている。